シェーグレン症候群を詳しく解説、症状と治療を中心に〜吉野眼科クリニック
3,シェーグレン症候群の症状
腺細胞からの分泌物の低下が基礎となつて、シェーグレン症候群にはさまざまな症状があらわれます。そして、その他の自己免疫疾患(関節リウマチ,全身性エリテマトーテスなど)を合併しない原発性シェーグレン症候群と、合併する続発性シェーグレン症候群とのあいだには、その症状にかなりのバリエーションがあって,診断を難しくしているひとつの要素になっています。
(1)眼症状
シェーグレン症候群の最も重要な症状は目の症状で、これはとりもなおさず涙の分泌の減少によるものです。目が疲れる、めやにが多くねちゃつく,ごろごろする,痛む,膜がかかったようにかすむ、まぶしい、朝、目が開けられない,といったものがその症状です。しかし、患者さん自ら「目が乾きます」といって来院するケースは比較的少ないです。このことはおそらく目には乾きに対するセンサーがなく,この乾きとそれによって起る症状を以上のような表現で示すからではないかと考えています。特に,患者さんが「目が疲れる」といった場合には医師はドライアイを一つの可能性として念頭におくことが必要です。もちろんドライアイがすべての疲れの原因であるとは限りません。しかし、目が疲れ� �と訴える患者さんの約六〇%がドライアイでしたし、またドライアイを呈している患者さんの約六〇%が目の疲れを訴えたというデータがあります。
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涙の分泌様式は二種類あります。ひとつは基礎分泌といって日常の普通の状態での分泌様式です。シェーグレン症候群ではないドライアイはこの分泌様式に障害があるものと推測できます。一方、反射性分泌という分泌様式がありますが、これは悲しい映画を見たり,玉葱をきったり、ゴミが目に入ったときにはたらく分泌様式です。シェーグレン症候群の場合はこの分泌様式も障害されており、まさに「悲しくても涙すらでない」といった泣くに泣けない状態です。このことを利用した検査がシェーグレン症候群を診断する上で重要な検査になっているほどです。
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(2)口腔症状
次に重要な症状は口内乾燥(ドライマウス)です。これも自己免疫現象により自らの唾液腺が破壊され唾液の分泌が減少することにより起こる症状です。唾液は食べかすを洗い流す作用もありますが、抗菌作用を持つラクトフェリン、リゾチーム、分泌型lg Aといった物質も含まれています。また、カルシウム、リン、フッ素といったミネラルによって歯を守ります。従って、唾液分泌の減少により虫歯が増えるということがおわかりになると思います。その他の自覚症状としは、口が乾燥するおせんべいやクラッカーが嫌いになる、味覚がなくなる、口唇や口角がひび割れる、口内炎ができやすい、といったものがあります。また乾燥は喉までに及び食べ物が喉を通らなかったり、声がかすれたりすることもあります。他覚的な症状としては舌乳頭の萎縮で、舌が平坦になることが特徴です。
(3)関節痛
関節痛は関節リウマチの典型的な症状ですが、シェーグレン症候群もこの症状を呈します。しかし、関節リウマチとシェーグレン症候群が合併することもあり、こ のことが両者の鑑別を難しくさせています。関節痛の直接の原因は骨膜という関節のすべりをよくする組織に障害がくることによりますが、シェーグレン症候群では関節リウマチのように関節の変形を起こすことはまずありません。関節痛は、両側性に、そして周期的にあらわれます。
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(4)膣乾燥症
膣にもバルトリン腺という膣を滑らかにする分泌腺があります。従ってシェーグレン症候群では膣乾燥症が起こりえます。これは性交時の痛みの原因になり,また正常細菌叢を破壊するため膣炎の原因となります。これはなかなか医師にも相談しにくい症状でしょうが、このあと治療の項でも述ぺますように、この症状を改善する方法はあります。一人で悩むより適切なアドバイスを専門家より受けることが大事です。
(5)その他の症状(腺外症状)
涙腺、唾液腺といった分泌腺の障害による乾燥症状のほかに全身の臓器の障害もシェーグレン症候群の二〜三割にみられます。
(6)呼吸器症状
上気道(口、喉、鼻)、不気道(気管、気管支、肺)には粘液腺という分泌腺があります。分泌された粘液は異物や細菌を痰として外部に排出する働きがあります。シェーグレン症候群においては、やはりこの分泌腺にもリンパ球の浸潤がみられます。その働きは障害され、粘液は粘稠性を増し気道を閉塞します。これにより呼吸障害や呼吸器感染症が起こるわけです。
(7)血管炎
これは、ほとんどすべての自己免疫疾患に共通する所見です。抗体と抗原が結合してできた免疫複合体が血管の壁に沈着し、その内腔を閉塞し、また血管そのものがリンパ球の浸潤により障害されるといった機序が考えられています。ご存知のように全身の臓器は血管により栄養され、また血管によりその老廃物は運び出されています。したがって、各種の臓器がこの血管炎のために障害されることが容易に予想できます。レイノー症状といった、冷たい水をさわったときに手先が蒼白になりしびれ、その後に潮紅するといった症状も血管炎によるものです。そのほかにも皮下の小血管の障害のために出血斑があらわれ色素沈着を起こしたり、結節を作ったり� ��その逆に脂肪が減少するといったこともあります。シェーグレン症候群の血管炎は免疫反応を抑制する副腎皮質ホルモン(ステロイド)や、サイクロフォスファマイドといった治療薬によく反応しますが、これらの薬剤は副作用も多く慎重な投与計画が必要です。
(8)腎臓
腎組織もリンパ球の浸潤、免疫複合体の沈着、血中蛋白(クリオグロブリン、マイクログロブリン)の沈着により障害されます。このために尿を濃縮する働きに障害がおき尿量の増加のために頻尿になります。また、血液が酸性になり(尿細管性アシドーシス)このことが原因で血液中の電解質に異常が起こり、心臓や筋肉の収縮、神経の伝達に障害を起こします。しかし、骨組織の障害は、間質性骨炎の場合が多く臨床的にその症状が強くあらわれることは少ないようです。
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