以下の情報は、出願公開日時点(2008年11月06日)のものです。
0001
本発明は、外因性及び内因性物質に関する心理学的中毒及び生理学的依存を予防する改良型方法に、並びにそのための組成物に関する。より詳細には、本発明は、薬学的化合物を神経ステロイド産生阻害薬と組合せて投与して、内因性神経ステロイド産生を予防する方法及びそのための組成物に関する。本発明は、薬学的化合物を神経ステロイド産生阻害薬と組合せて投与して、内因性及び外因性物質の両方の交差耐性作用を回避することにも関する。
0002
[関連出願の相互参照]
本発明は、優先権に関して、米国特許仮出願第60/669,033号(表題「物質乱用の治療のための改良型方法」)(2005年4月7日出願)、米国特許仮出願第60/728,979号(表題「物質乱用及び依存症の治療方法」)(2005年10月21日出願)及び米国特許仮出願第60/729,013号(表題「不安関連疾患の治療方法」)(2005年10月21日出願)によっている。
0003
本発明は、プロゲステロン代謝物質アロプレグナノロンによるGABAAの調節を、直接又は間接的に防止する方法及びそのための組成物にも関する。より詳細には、本発明は、従来の薬学的化合物の治療活性をアロプレグナノロンの産生を抑制する神経ステロイド産生阻害薬の治療活性と組合せることに関する。
0004
本発明は、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する一クラスの化合物から薬学的組成物を用いる方法にも関する。
0005
中毒は、その負の結果と関係なく、一行動を反復するための制御不可能な強迫である。多数の薬剤又は行動は、中毒として認識される一パターンの活動をもたらし、例としては、より多くの薬剤又は行動に対する欲求、曝露に対する生理学的耐性の増大、並びに刺激の非存在下での離脱症候が挙げられる。区別はしばしば生理学的中毒及び身体依存間でなされるが、しかし本用語は、この明細書を通して互換的に用いられる。
0006
中毒は一般的に違法麻薬に適用されると考えられるが、一方、合法的物質、例えば処方及び市販薬剤も中毒を引き起こし得る。正の治療効果を有する多数の有用な合法的処方及び市販薬剤が存在するが、一方、それらは、これらの薬剤を使用する患者において中毒傾向が認められるという点で、使用が限定される。
0007
物質中毒及び乱用は、多因性神経学的疾患である。時が経つにつれ、内因性及び外因性の両方の種々の物質への反復曝露は、受容体後シグナル伝達カスケードにおける神経伝達回路及び適応の修飾を引き起こす。この神経細胞修飾のいくつかの作用が存在する。それらの間で、報酬経路を活性化して、抑うつ動機づけ及び気分をもたらす天然報酬の能力の低減、並びに生理学的変化を補償する強迫増大が存在する。
0008
中毒の基礎を成す共通認知は「報酬回路」ということであるが、快楽は、必ずしも人をかれらの中毒に駆り立てるのに十分強い衝動であるわけではない。むしろ中毒行動は、離脱を経験している時に生じる不安を管理し及び/又は回避したいという強い欲求から生じる。同様に不安関連疾患は、内因性神経ステロイド離脱中に経験される不安を管理し及び/又は回避したいという強い欲求から生じる行動により引き起こされる。
0009
物質依存、例えばベンゾジアゼピン乱用のための伝統的治療は、認知行動療法又は薬物療法或いはその組合せに基づいていた。しかしながら従来の治療方法は、中毒及び依存に伴って起こる生理化学的変化をそれらが取り扱わないという点で失敗している。さらに物質乱用を治療するための従来の方法は、患者が物質に対して中毒になり、離脱症候を経験するまで待つ必要がある。
0010
したがって、必要なものは、処方又は市販の薬剤に対する心理学的中毒並びに生理学的依存を防止するための改良型方法及び組成物である。
0011
さらにまた必要なものは、既知の処方又は市販薬剤を低中毒性及び習慣性にするための方法である。
0012
[発明の概要]
本発明は、外因性及び内因性物質に関する心理学的中毒及び生理学的依存を防止するための改良型方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、内因性神経ステロイド産生を防止するための神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて薬学的化合物を投与するための方法及び組成物に関する。本発明は、内因性及び外因性物質の両方の交差耐性及び複合離脱作用を回避するために、神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて薬学的化合物を投与することにも関する。
0013
本発明は、プロゲステロンによるGABAAの調節を直接又は間接的に防止するための方法及び組成物にも関する。
0014
本発明は、プロゲステロン代謝物質アロプレグナノロンによるGABAAの調節を直接的又は間接的に防止するための方法及び組成物にも関する。より詳細には、本発明は、従来の薬学的化合物の治療活性を、アロプレグナノロンの産生を抑制する神経ステロイド産生の阻害薬の治療活性を組合せることに関する。
0015
中毒特性を有する物質を、神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて含む組成物も提供される。これらの化合物の投与方法も、本明細書中で提供される。中毒特性を有するこのような物質としては、刺激薬、避妊薬、精神安定薬、鎮静薬、催眠薬、ベンゾジアゼピン、鎮痛薬及びバルビツレートが挙げられ得る。これらの組成物は、受容体サブユニット発現のモジュレーターを任意に含み得る。
0016
一実施形態では、本発明は、乱用物質に対する中毒又は依存を防止するために治療的有効量の内因性神経ステロイド産生の阻害薬を組合せた治療的有効量の薬学的化合物の組成物に関する。
0017
別の実施形態では、本発明は、中毒を防止し、又は依存を低減するのに有効な習慣性又は中毒性副作用を伴わない薬学的化合物の投与方法であって、薬学的化合物に対する中毒を防止し又は依存を低減するために治療的有効量の薬学的化合物を、治療的有効量の内因性神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて投与することを包含する方法に関する。
0018
したがって、乱用物質に対する依存又は中毒を低減するための組成物及び方法を提供することは、本発明の一目的である。
0019
したがって、神経ステロイドの形成を抑制するための方法及び組成物を提供することが
、本発明の別の目的である。
0020
GABA受容体サブユニットの発現を調節するための組成物及び方法を提供することが、本発明の別の目的である。
0021
本発明の別の目的は、乱用物質に対する中毒又は依存を防止するための薬剤の調製における神経ステロイド産生阻害薬の使用を提供することである。
0022
本発明の別の目的は、物質乱用に対する中毒又は依存を防止するための薬剤の調製における神経ステロイド産生阻害薬及び薬学的化合物の使用を提供することである。
0023
本発明のこれらの並びに他の目的、特徴及び利点は、開示された実施形態及び特許請求の範囲についての以下の詳細な説明、並びに提示された図面の検討後、明白になるであろう。
0024
[発明の詳細な説明]
I.序論
本発明は、本明細書中に含まれる特定の実施形態についての以下の詳細な説明を参照することにより、さらに容易に理解され得る。本発明をその特定の実施形態の特定の詳細を参照しながら説明してきたが、しかしこのような詳細は本発明の範囲に関する制限とみなされるべきものではないことが意図される。
0025
本発明は、外因性及び内因性物質への心理学的中毒及び生理学的依存を防止するための改良型方法及び組成物に関する。本明細書中で用いる場合、「乱用物質」という用語は、中毒生成物質を指し、例としてはオピオイド、ベンゾジアゼピン、大麻、カフェイン、ニコチン、並びに神経報復経路を刺激し、中毒を促進するその他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。より詳細には、本発明は、内因性神経ステロイド産生を防止するための神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて薬学的化合物を投与するための方法及び組成物に関する。本発明は、内因性及び外因性物質の両方の交差耐性及び化合物離脱作用を回避するために、神経ステロイド産生の阻害薬と組合せて薬学的化合物を投与することにも関する。
0026
本発明は、プロゲステロンによるGABAAの調節を直接又は間接的に防止するための方法及び組成物にも関する。
0027
本発明は、プロゲステロン代謝物質アロプレグナノロンによるGABAAの調節を直接的又は間接的に防止するための方法及び組成物にも関する。より詳細には、本発明は、従来の薬学的化合物の治療活性を、アロプレグナノロンの産生を抑制する神経ステロイド産生の阻害薬の治療活性を組合せることに関する。
0028
一実施形態では、内因性神経ステロイド産生並びに内因性及び外因性物質間の交差耐性の有効防止は、種々の物質に起因する中毒の前に起こる根元的病理生理学、即ちプロゲステロン及びデオキシコルチコステロン(DOC)並びにそれらの代謝物質アロプレグナノロン及びテトラヒドロデオキシコルチコステロン(これらは、長期曝露及び離脱時に、GABAA受容体α1サブユニットと比較してGABAA受容体α4サブユニットの発現増大を生じる)の転換を取り扱うことを必要とする。
0029
一実施形態では、有効組成物は、従来の薬学的化合物の治療活性を神経ステロイド産生の阻害薬の治療活性と組合せたものである。
0030
一実施形態では、有効組成物は、処方又は市販薬剤への心理学的中毒及び身体依存を防止するものである。
0031
一実施形態では、本発明は、既知の処方又は市販薬剤を低中毒性及び低習慣性にするための有効組成物に関する。
0032
一実施形態では、薬学的化合物は、オピオイド及びそれらの誘導体を含む化合物のクラスから選択される。
0033
一実施形態では、薬学的化合物は、テトラヒドロカンニボール及びその誘導体を含む化合物のクラスから選択される。
0034
一実施形態では、薬学的化合物は、ベンゾジアゼピンを含む化合物のクラスから選択される。
0035
一実施形態では、薬学的化合物は、精神安定薬、鎮静薬、催眠薬及びバルビツレートを含む化合物のクラスから選択される。
0036
一実施形態では、薬学的化合物は、避妊薬を含む化合物のクラスから選択される。
0037
一実施形態では、薬学的化合物は、刺激薬及びその誘導体を含む化合物のクラスから選択される。
0038
一実施形態では、神経ステロイド産生の阻害薬は、5−アルファ−レダクターゼ阻害薬である。一実施形態では、5−アルファ−レダクターゼ阻害薬はフィナステリドである。一実施形態では、5−アルファ−レダクターゼ阻害薬はデュタステリドである。一実施形態では、5−アルファ−レダクターゼ阻害薬は有機薬剤、例えばノコギリヤシ及びスピロノラクトンであるが、これらに限定されない。
0039
一実施形態では、神経ステロイド産生の阻害薬は、3−アルファ−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ遮断薬である。一実施形態では、3−アルファ−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ遮断薬はインドメタシンである。
0040
一実施形態では、内因性及び外因性物質に対する依存、耐性、並びにその間の交差耐性は、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する化合物の一クラスからの薬学的組成物を任意に投与することによりさらに防止され得る。より詳細には、化合物は、GABAA受容体で、より詳細には、α4サブユニット又はα6サブユニットでアゴニストとして役立つもの、そしてGABA流を積極的に強化し得るものである。
0041
一実施形態では、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する化合物の一クラスからの化合物は、フルマゼニルである。一実施形態では、フルマゼニルは、制御放出処方物で投与される。一実施形態では、フルマゼニルは、皮下インプラントにより投与される。別の実施形態では、フルマゼニルは経皮パッチにより投与される。
0042
この説明で用いる場合、「物質乱用」という用語は、個体の物質使用の制御減損、有害結果にも関わらず物質使用を継続すること、強迫的物質使用及び/又は薬剤欲求を発現する種々の身体的及び心理学的状態を指すために用いられる。当該用語は、心理学的依存、
身体依存、耐性、物質使用の不適応パターン、物質使用に心を奪われること、及び/又は使用中断時の離脱症候の存在を含むよう意図される。上記にも関わらず、「中毒」及び「依存」という用語は、この本文全体を通して互換的に用いられる。
0043
ここで、本発明の特定の実施形態が詳細に参照される。本発明は特定の実施形態と一緒に記載されるが、本発明は一実施形態に限定されることは意図されない。
0044
II.GABA作動性系
a.ガンマ−アミノ酪酸(GABA)
GABAは、脳及び脊髄中の抑制性シナプスで作用する神経伝達物質である。GABA系は、他の場所の中でも特に、記憶形成に関連する脳の領域である海馬に見出される。グルタミン酸又はグルタメートは、興奮性神経伝達物質として、そしてGABA作動性ニューロン中でのGABAの合成のための前駆体として、脳機能において重要である。グルタミン酸は、以下でさらに詳細に記載されるイオンチャネル型及び代謝型グルタミン酸受容体の両方を活性化する。GABAシグナルは、記憶形成の記録及び固定段階を妨害する。
0045
b.GABA受容体タイプ
GABA受容体は、それらの内因性リガンドとしてGABAを有する受容体の一群である。イオンチャネルそれ自体であるイオンチャネル型受容体、及び中間体によりイオンチャネルを開放するGプロテイン結合受容体である代謝型受容体を含むGABA受容体のいくつかのクラスが既知である。グルタミン酸及びGABAは、それらの受容体の活性化によりそれらの作用を媒介する。
0046
イオンチャネル型GABA受容体(GABAA受容体)は、21のサブユニットから成る8つのサブユニットファミリー(α1-6、β1-4、γ1-4、δ、ε、π、θ、p1-3)の存在を基礎にしており、並外れた構造的不均質性を示す。GABAA受容体は、5つの円形に配列された相同サブユニットで構成され、薬剤作用の重要部位である。非常にしばしば、GABAA受容体異性体は、2つのαサブユニット、2つのβサブユニット及び1つのγサブユニットを含む。代謝型GABA受容体(GABAB受容体)は、2つのサブユニット:即ちGABAB1及びGABAB2から成る。GABAB受容体の活性化後の生理学的応答は、GABABi及びGABAB2の共同ア� ��ンブリ(co-assembly)を要し、GABAC受容体も元々存在する。
0047
c.GABAA受容体サブユニット
GABAA受容体系は、多数の中枢神経系障害に関与し、GABAA受容体リガンドを潜在的治療薬にする。GABAA受容体は、グリシン、ニコチン様コリン作動性及びセロトニン5HT3受容体と同一のスーパーファミリーの受容体に属するリガンド依存性(ligand-gated)イオンチャネルである。いくつかのGABAA受容体の機能増強は、以下でさらに詳細に記載されるベンゾジアゼピンの主要作用を果たす。さらに、多数の化合物が、GABAA受容体に対する機能的選択性を示している。
0048
GABAA受容体複合体は、7つの異なるクラスからのサブユニットの共同アセンブリにより形成される五量体受容体タンパク質構造である。5つのサブユニットは、中心塩素イオン透過性孔を囲む環状アレイ中に位置する。ニコチン様アセチルコリン受容体中のリガンド誘導性チャネル開口に関するメカニズムはリガンド結合ドメイン中のサブユニットの回転を包含する、ということが示唆されている。GABAA受容体がチャネル開口に関して同様のメカニズムを利用すると仮定すると、GABAA受容体はニコチン様アセチルコリン受容体と同一のスーパーファミリーに属するため、大型置換基はチャネル開口を妨げて(立体障害)、或る種の化合物のアンタゴニスト作用を生じ得る。さらに、GABA受容体の活性化� ��、いくつかの他の系に影響を及ぼして、最終的には中枢神経系の全体的
機能の全身性急性修飾を生じる。
0049
サブユニットの特定の組合せは異なる薬理学的及び生理学的特性を有する受容体を生じるが、GABAA受容体組成物は不変ではない。GABAA受容体媒介性抑制を促すことによりそれらの作用を生じる抗不安薬ベンゾジアゼピンからの離脱は、皮質及び海馬の両方におけるα4及びβ1サブユニットmRNAの定常状態mRNAレベルの増大を生じる。δサブユニットはしばしば、α4サブユニットを含むGABAA受容体サブタイプと関連づけられる、ということに留意すべきである。
0050
GABA及びGABAA受容体は、発作、抑うつ、不安及び睡眠障害のような疾患状態に関与する。GABA、並びに他の直接又は間接的に作用するGABAA受容体アゴニスト(GABA模倣物)、例えばぞれぞれアロプレグナノロン及びテトラヒドロデオキシコルチコステロンのうちのいくつかは、α及びβサブユニット間の界面に位置する認識部位に特異的に結合する。しかしながら古典的ベンゾジアゼピン、例えばジアゼパム及びフルニトラゼパムは、αサブユニット及びγサブユニット間の界面に位置するアロステリック部位に結合する。
0051
より詳細には、GABAは、αサブユニット及びβサブユニット間の間隙に結合し、その作用は塩素イオンチャネルをゲート開口して、細胞中への塩素イオンの流入を可能にする。これは、一般的には、細胞の膜電位をより負とすることにより、ニューロン活性に及ぼす抑制作用を有する細胞を過分極して、結果的に脱分極閾値を増大して、作用電位を生じる。
0052
ほとんどの抑うつ及び鎮静薬、例えばベンゾジアゼピン精神安定薬、バルビツレート、麻酔薬及びアルコールは、細胞中に負荷電塩素イオンを蓄積して、鎮静又は麻酔作用を誘導するに際して、それらがGABAの作用を増強し得る独特の部位でGABAA受容体に及ぼす調節作用を有すると考えられる。
0053
GABAの分子の種々の部分のコンホメーション制限及びアミノ酸の官能基の生物立体的置換は、広範囲の特異的GABAAアゴニストをもたらす。これらの分子のいくつかは、GABAA受容体ファミリーの薬理学を理解するに際して重要な役割を果たす。
0054
GABAA受容体中の特定のαサブユニットアイソフォームの非存在又は存在は、或る種の薬剤に対する選択性を付与する。異なるαサブユニットは、ベンゾジアゼピンの別個の薬理学的作用、例えば鎮静−催眠作用及び抗不安作用も媒介する。ベンゾジアゼピンの長期投与は、これらの薬剤の作用のいくつかに対する耐性の発現を生じ、したがってそれらの臨床的効能を低減する。これらの依存に関する分子的基礎は依然として不明であるが、耐性及び依存はベンゾジアゼピンの薬力学に関連づけられるようである。
0055
ベンゾジアゼピンの長期投与は、種々のGABAAサブユニットをコードする遺伝子の発現を修飾する。遺伝子発現におけるこれらの変化は、GABAA受容体のそれらの薬理学的モジュレーターに対する感受性を変更し、それによりこれらの薬剤に対する耐性又は依存の発現の基礎を成す。GABAA受容体のサブユニット組成物は、ベンゾジアゼピン受容体リガンドに対するそれらの親和性及びこれらのリガンドの効能を確定する。例えば古典的ベンゾジアゼピンアゴニスト(例えばジアゼパム)、イミダゾピリジン、イミダゾキノロン及びピラゾロピリミジンは、α4サブユニット又はα6サブユニットを含むGABAA受容体に対する親和性又はGABAA受容体での効能を示さない。
0056
ネイティブGABAA受容体のサブユニット組成物は、それらの生理学的及び薬理学的機能を規定するに際して重要な役割を果たす。GABAA受容体のサブユニット組成物が
調節されるメカニズムを理解することにより、GABAA受容体の生理学的、薬理学的及び病理学的役割を特性化することが可能である。したがって特異的GABAA受容体サブユニット遺伝子の発現は、種々の生理学的及び薬理学的モジュレーター、例えば薬理学的作用物質、内因性神経ステロイド及び食物(これらに限定されない)により影響を及ぼされ得る。
0057
例えば、ベンゾジアゼピン、ザルペロン、ゾルピデム又は神経ステロイドへの長期曝露及びその後の離脱は、α4サブユニットmRNAの増大を含む特異的GABAA受容体mRNAの及びポリペプチドサブユニットの発現における、並びに培養細胞中でのGABAA受容体機能における選択的変化を生じる。ジアゼパム又はイミダゼニルからの離脱は、GABA作用を強化するジアゼパムの能力低減及びGABA作用を強化するフルマゼニルの能力の両方に関連していた。長期ベンゾジアゼピン治療及びその後の離脱は受容体サブユニット組成物における変化をもたらし、そしてこれらの新規合成受容体は、ベンゾジアゼピンに対して低応答性である。しかしながらα4サブユニットの上方制御は、ベンゾジアゼピン依存の発 現のために、必然的に他のサブユニットの下方制御とカップリングされ得る。