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東北大学循環器内科教授・下川 宏明
Circulation Journal編集長のコメント
大規模な健康診断データを利用した本研究において,HDL-Cの低値が女性でのみ,心房細動発症の危険因子であることが示唆されました。
LDL-C高値では逆相関も示唆されたことから,このcholesterol paradoxに関する今後の検証が期待されます。
脂質値と心房細動発症の関係は未確立
心房細動の患者数は2000年の時点で約72万人に上り,増加傾向は今後も続くと指摘されている。
そうした中,高血圧,糖尿病,心不全や冠動脈疾患が発 症に関与することが明らかになり,血圧や血糖など動脈硬化性疾患危険因子の管理が,心房細動の発症予防にもつながることが分かってきた。
一方,脂質代謝に 関しては心房細動発症との関係が十分に明らかにされていなかった。
そこで,新潟大学第一内科循環器学分野の渡部裕氏らは,住民健診のデータから脂質代謝と 心房細動発症リスクの関係を検証した。
その結果,女性におけるHDLコレステロール(HDL-C)低値では心房細動発症リスクが上昇していた。
一方で,LDLコレステロール(LDL-C)高値では発症リスクが低下傾向にあるなど,脂質代謝全般での一貫した結果は示されなかった(Circ J 2011; 75: 2767-2774)。
LDL-C値では予想と相反する結果に
渡部氏らの調査は,新潟県内の住民健診に基づいたもので,県内約25万人の健診データのうち,1996~98年(登録時点)に空腹時血糖値を測定しており,それ以降2005年までに1回以上毎年連続して健診を受診した者を対象に解析した。
また,登録時点での心房細動既往例や,ペースメーカ植え込み例,脂 質異常症治療薬服用例は除外した。
解析対象は2万8,449例で,平均年齢は59歳,女性が約65%(1万8,644例)を占めた。
追跡期間の4.5年間で265例(全体の0.9%)が 心房細動を発症。年齢調整後の発症率は2.07/ 1,000人・年で,女性の1.39/1,000人・年に対して男性では3.28/1,000人・年と高率だった。
動脈硬化性疾患ガイドラインに準じた脂質基準値で心房細動発症率との関係を見たところ,総コレステロール(TC)値220mg/dL未満群に比べて 220mg/dL以上群では心房細動発症率が有意に低かった(P=0.001)。また,LDL-C値140mg/dL未満群に比べて140mg/dL以上 群では有意に発症率が低かった(P=0.004)。
しかしLDL-C値については,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた解析では有意差が示されず,LDL-C低値による心房細動発症リスクの上昇には他の危険因子も影響していることが示唆された。
同氏は,心血管疾患の危険因子として確立されているLDL-C高値が心房細動発症リスクにも関係すると推測していたが,結果はそれに反するものだった。
これまでの報告でもLDL-C値と心房細動発症リスクの関係について一貫した答えが得られていないため,同氏は,この解析のみから結論を導くことはできないと強調する。
しかし,ある程度確立した知見としてLDL-C低値と脳出血リスク上昇も示されていることから,「LDL-Cには適正値があり,高値がすべての心血管リスクの上昇に結び付いているわけではないのではないか」と考察している。
HDL-C値,女性で強い相関示すが男性で認めず
HDL-C値については,40mg/dL以上群に比べて40mg/dL未満群で有意に発症率が高くなっており(図),この両群間の差は,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた場合にも認められた。
一方,トリグリセライド(TG)値については150mg/dL以上群と150mg/dL未満群で同等の発症率だった。
さらに,男女別で脂質値と心房細動発症リスクの関係を見たところ,女性ではHDL-C 40mg/dL未満群のハザード比(HR)が2.86で40mg/dL以上群に比べて有意なリスク上昇〔95%信頼区間(CI)1.49~5.50〕が示されたが,男性ではHR 1.35(95%CI 0.77~2.38)で有意差は示されなかった(表)。
渡部氏は,HDL-C値の低下に伴う心臓への悪影響や,抗炎症薬やスタチンによる心房細動の進展抑制の報告もあることから,今回の解析で示された HDL-C低値と心房細動発症リスク増大の関係については,ある程度一貫性のある成績であると考察している。
ただし,脂質値と心房細動発症の関係について は不明な点も多く,今回の調査はあくまでも1つのコホートで示された結果であり,治療介入がリスク低下につながるかどうかは新たな知見が必要と慎重な解釈を促している。
出典 Medical Tribune 2011.12.22
版権 メディカルトリビューン社
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帯状疱疹はcontagousです。
HDL-C低値の心疾患患者に対し、積極的な脂質低下療法に、徐放性ナイアシンを追加投与することで、心血管イベントの発生リスクは抑制できず、追加投与の意義は認められなかった。
11月12~16日まで、米国・オーランドで開催された米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で、11月15日に 開催された「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで、AIM-HIGH Investigatorsを代表して、William E.Boden氏が、「AIM-HIGH(Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides : Impact on Global Health Outcomes)」試験の結果を報告する中で明らかにした。(望月英梨)
心疾患患者の治療に際し、スタチン治療により目標としたLDL-C値に到達しているにもかかわらず、心血管系リスクが残存することが指摘されている。
試験は、心疾患と診断され、スタチンと必要に応じたエゼチミブによる最適化した脂質低下療法を受けているにもかかわらず、HDL-C値が低い患者に、徐放 型ナイアシンを上乗せすることで、残されている心血管イベント発症リスクを軽減することができるか、長期間追跡し、検討した。
対象は、
①冠動脈性疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患(PAD)のいずれかを合併する45歳以上
②脂質異常症(ベースライン時のHDL-C低値:男性 <40mg/dL、女性<50mg/dL、TG:150~400mg/dL、LDL-C<180mg/dL)
――を満たす患者。
米国とカナダの92施設か ら登録された。
すべての患者は、シンバスタチン40~80mg/日を投与し、必要に応じてエゼチミブ10mg/日を追加投与し、LDL-C値が40~80mg/dLにコ ントロールした。
その上で、試験開始時に4~8週間のrun-in期間を設け、シンバスタチン40mg/日に加え、徐放性ナイアシンを500mg/日から 1週間ごとに2000mg/日まで増量した。
①徐放性ナイアシン1500~2000mg/日投与群1718例②プラセボ投与群1696例
――の2群に分け、治療効果を比較した。
主要評価項目は、冠動脈疾患死+非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中+急性冠動脈疾患(ACS)による入院+冠動脈、脳血行再建による症状。
同試験は、有効性を満たしていないこと、徐放性ナイアシン投与群で虚血性脳卒中の発生が増加していることが懸念されたことから、データ安全性モニタリング委員会が中止を勧告し、2011年5月25日に中止された、追跡期間(平均)は、36カ月間。
患者背景は、平均年齢が64±9歳、男性が85.2%、白人が92.2%、糖尿病合併が33.9%、高血圧合併が71.4%などだった。シンバスタチンの投与は40mg/日未満� ��40mg/日、40mg/日以上がプラセボ群で11%、50%、25%。一方、ナイアシン群では19%、50%、18%だった。
一方、エゼチミブは、プラセボ群で22%に対し、ナイアシン群では10%でプラセボ群で有意に高い併用率となった(P<0.001)。
◎ナイアシン投与群でHDL-C値は有意に上昇
ベースライン時にスタチンを投与されていた群(3196例)では、LDL-C値(中央値)が71mg/dL、平均HDL-C値が35mg/dL、TG値が 161mg/dLだった。ベースライン時のスタチン投与群は、全体の94%を占め、スタチンの投与期間は1年以上が76.2%、5年以上が39.5%だっ た。
一方、スタチン非投与群(218例)では、LDL-C値が119mg/dL、HDL-C値が33mg/dL、TG値が215mg/dLだった。
2年経過時点の脂質のプロファイルをみると、ナイアシン群では、HDL-C値(中央値)が35mg/dLから42mg/dLで25.0%上昇したのに対し、プラセボ群では35mg/dLから38mg/dLで9.8%の上昇にとどまり、ナイアシン群で有意に上昇した(p<0.001)。
TG値は、プラセボ 群の8.1%に対し、ナイアシン群は28.6%、LDL-C値は、プラセボ群の5.5%に対し、ナイアシン群で12.0%いずれも有意に減少した (p<0.001)。
主要評価項目の発生率は、プラセボ群の16.2%(274例)に対し、ナイアシン群では16.4%(282例)で、ハザード比は1.02で、ナイアシン群で上昇する傾向がみられた([95%CI:0.87-1.21]、p=0.79 log-rank test)。
一方で、虚血性脳卒中の発生率は、プラセボ群の0.9%(15例)に対し、ナイアシン群では1.6%(27例)で有意差はないものの、上昇する傾向が示された(HR:1.61 [0.89-2.90]、p=0.11)。
そのほか、ナイアシン群は副次評価項目である冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中+ハイリスクのACS(1.08 [0.87-1.34]、p=0.49)、冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中(1.13 [0.90-1.42]、p=0.30)、心血管系死亡(1.17 [0.76-1.80]、p=0.47)で、いずれもナイアシン群で高い発生率となる傾向がみられた。
これらの傾向は、年齢、性別などによらず一貫した傾向を示した。
結果を報告したBoden氏は、前治療としてスタチンが94%、ナイアシンが20%投与されていたことに触れ、「ナイアシンの良好な効果を示すには限界が あった」と指摘した。
また、プラセボ群でも予期せぬHDL-C値の上昇がみられたことから、2群間の有意差を少なくしたと指摘した。
Boden氏は一方で、主要評価項目の発生率が16.2%だったことから、5.4%/年の心血管イベント発生リスクがあることを指摘。
その上で、 「LDL-C値が70mg/dL未満で、安定、非急性冠動脈疾患患者に対し、スタチン治療にナイアシンを追加投与した積極的な治療を実施することは、36 カ月の追跡期間で、HDL-C値とTG値の有意な改善をを認めたものの、臨床的効果は認められなかった」と結論付けた。
また、この結果から脂質治療におい てLDL-C値が主なターゲットであると記載された現行のガイドラインである「NCEP ATP-Ⅲ」の内容を再確認したとした。
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高齢者の高コレステロール血症をどうするか
コレステロールについての残された難問
自然にcholestral下げるためにどのように
研究の背景:コレステロール治療の議論続き,新たな医学的根拠も発表
2010年以降,コレステロールの治療についてさまざまな議論がなされてきた。
そして,それにかかわるさまざまな医学的根拠は今もなお発表されているところである。
このたび,米国老年医学会雑誌に高齢者においては低コレステロールが心血管死以外の死亡の増加と関連していることを示す観察研究・ロッテルダム研究のデータが示された(J Am Geriatr Soc 2011; 59: 1779-1785)。
研究のポイント1:ロッテルダム市の住民を対象とした前向きコホート研究
ロッテルダム研究は,高齢者における慢性疾患の発症率や危険因子を検討する目的に行われている前向きコホート試験であり,1990年から93年にかけて,オランダ・ロッテルダム市のオンモールト地区の55歳以上の全住民に登録への協力が呼びかけられ,7,983人(住民の78%)が同意し,ベース ラインの採血を受けた。
今回の報告もその研究の一環としてなされたもので,2007年1月までの死亡を特定し,ベースラインでの脂質プロファイルと死亡率や死因との関係を見たものである。
採血を完了できた7,009人のうち,コレステロール値が極端に異常を呈する者〔総コレステロール(TC)>463mg/dL,HDLコレス テロール(HDL-C)>135mg/dLなど〕12人,心血管疾患の既往のある者717人,心血管疾患についての情報の取れなかった者433人,脂質低 下療法薬を内服している者93人を除外し,計5,750人(4人のずれが生じているが理由は不明;平均年齢68.8歳,女性62%)が解析の対象とされ た。
なお,ベースラインの採血は随時で実施されたため,TCおよびHDL-Cのみが測定され,トリグリセライド(TG)やFriedwald式から求める LDL-Cは解析項目としなかった。
中央値で13.9年のフォローアップがなされ,2,462人(42.8%)が死亡した。そのうち,807人(32.8%)が心血管疾患に関連した死亡であり,残る1,655人(67.2%)が心血管死以外の死亡であった。
研究のポイント2:高コレステロールは心血管死以外の死亡の低さと関連
5,750人のベースラインでの特徴は表のようなものであった。
年齢・性で調整後の心血管死以外の死亡とTCの関係は,TCが38.61mg/dL(1mmol/L)上昇するごとに死亡率が12%減少していた〔ハ ザード比(HR)0.88,P<0.001〕。
HDL-Cと心血管死以外の死亡との間には統計学的な関係はなく,非HDL-Cコレステロール(TCから HDL-Cを減じたもの)が38.61mg/dL上昇するごとに死亡率が11%減少していた(HR 0.89,P<0.001)。
年齢層別に検討してみると,TCについては,38.61mg/dL高値であるごとに,65歳以上のすべてのグループで心血管死以外の死亡率が有意に低下しており,85歳以上のグループでは心血管死の死亡率が有意に低下していた。
同様にHDL-Cについては,55〜64歳のグループにおいての み心血管死以外の死亡率が低下しており,85歳以上のグループにおいてのみ心血管死の死亡率が低下していた(図)。
山田先生の考察:生存者バイアスや低栄養患者の存在だけでは説明が難しいかもしれない
本研究はコレステロールが高くなるほど心血管死以外の死亡率が低下することを示したという点で,日本脂質栄養学会ガイドラインの主張の根拠にもなりうる内容になっている。
しかし,この研究結果を単純に解釈することには抵抗感を覚える。
例えば,生存者バイアスの存在である。
ベースラインの年齢ごとの特徴を見てみると,75歳以上になると症例数が少なくなっており,また,女性や非喫煙者 の比率が高くなっている。
このことは,75歳以上のグループではベースラインで死亡者が多く,特に男性や喫煙者での死亡者が多かったことを示唆する。
男性や喫煙者での死亡というと,考えやすいのは心血管疾患と呼吸器系疾患(悪性腫瘍)であり,このコホートは本来の母集団に比較して心血管系疾患や呼吸器系疾患に対して抵抗性がある集団となっているかもしれない。このことは糖尿病患者が19.1%,降圧薬内服者が47.7%も存在しながら85歳以上のグループ でTC値が上昇するごとに心血管死すら低下しているということにも合致する。
もう1つは,低栄養の関与である。ベースラインの特徴でも高齢になるほどコレステロール値が低下するとともにアルブミン値も低下している。
このことは高齢になるにつれて,生存者においてすら低栄養の問題が生じていることを示唆する。
本研究でもコレステロール値で三分位しての解析をしているが,その 際に正コレステロール血症と低コレステロール血症を区別していない。
低栄養患者が存在していればコレステロール値が高いほど予後が良いのも当然であり,高コレステロール血症の治療の必要性とは独立して考えねばならない。
ただし,症例数があまり減っておらず,コレステロールの平均値も55~64歳のグループとさほど変わっていない65~74歳のグループにおいても,TCが高くなるほどに心血管死以外の死亡が減っているというデータの解釈は,生存者バイアスや低栄養患者の存在だけでは説明が難しいかもしれない。
個人的には,「高コレステロール血症は動脈硬化性疾患の危険因子であり,(スタチン非投与下での)低コレステロール血症は低栄養のマーカーで ある。
いずれもよいことではない」と考えているが,「(スタチン投与中の低コレステロール患者を対象に,スタチンを中止して)コレステロールを上げることによって生命予後が良くなるかどうか」を検証するランダム化比較試験を(日本脂質栄養学会に)早く実施してもらいたいところである。
Morley氏のコメント:高齢者でも70歳代の再発予防にはスタチン使用を
ところで,この解釈の難しい論文を対象に,同じ号のJ Am Geriatr Soc(2011; 59: 1955-1956)にeditorialが記載されていた。
これを執筆したセントルイス大学の老年学教室のJE. Morley氏が「(低栄養を発症しやすい)高齢者に対するスタチンの意義」についての意見を明確に述べていたのでご紹介したい。
1. 高齢者に対するスタチンの効果
(1)冠動脈疾患に対して
2つのメタ解析により60歳以上(J Gerontrol A Biol Sci Med Sci 2007; 62: 879-887)あるいは65歳以上(J Am Coll Cardiol 2008; 51: 37-45)においてスタチンの投与によって30~37%の冠動脈疾患死亡リスクの低下を見込むことができることが示されている。
また,PROSPER試験(Lancet 2002; 360: 1623-1630)においても70歳以上の高リスク高齢者を対象にプラバスタチン投与により冠動脈疾患の予防効果が示されている。
〔山田補足:なお,PROSPER試験では脳卒中の予防については示されなかったものの,HPS試験では冠動脈疾患のみならず脳卒中も予防されていた(Lancet 2002; 360: 7-22)〕
(2)全死亡に対して
上記の2つのメタ解析において,スタチンの投与による15~22%の全死亡リスクの低下が示されている。PROSPER試験(Lancet 2002; 360: 1623-1630) においては全死亡率の低下は認められなかったものの,心血管疾患の既往のある高齢者に限定すると死亡率を低下させていた。
また,観察研究ではあるが Intermountain Heart Collaborative Studyにおいて,冠動脈疾患が血管造影に確認された集団では,80歳以上の超高齢者グループも含めて死亡率の低下が認められていた(J Am Coll Cardiaol 2002; 40: 1777-1785)。
(3)認知症に対して
認知症に対してスタチンが予防効果を持つというものから,中立的,あるいは認知機能障害を増悪させるかもしれないというものまで,さまざまなデータがある(J Alzheimers Dis 2010; 20: 737-747)。
(4)がんに対して
PRSOPER試験ではプラバスタチン群でがんが増加していたが,メタ解析ではそうした現象は認められなかった(Eur J Cancer 2008; 44: 2122-2132)。
2. 高齢者に対するスタチンの使用法
(1)70~80歳の人に対して
冠動脈疾患の既往のある患者の二次(再発)予防に対してはスタチンを使用すべきである。
しかし,The lower, the betterであるかどうかは不明なので,少量のスタチンが推奨される。
ただし,転倒やうつに対しての注意を要する。
一次(初発)予防としてのスタチンの使用を支持するエビデンスは存在しない。
(2) 80歳以上の人に対して
一般に80歳以上の患者にスタチンを使用することを勧める良好な医学的根拠はない。
ただし,観察研究からすると,冠動脈疾患の既往のある患者の二次(再発)予防にはスタチンを使用してもよいかもしれない。
80歳以上でスタチンを内服している患者にはLDLのサイズ測定をすべきである。その上でsmall dense LDLが優位である場合のみスタチンを継続すべきである。
出典 MT Pro 2012.1.12
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
2012.1.18に武田薬品が持続性AT1レセプターブロッカー
「アジルバ錠20mg・40mg」(アジルサルタン錠)の製造販売承認を取得。
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
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(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
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があります。
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第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011)での発表記事で勉強しました。
それを行う自分ワイト損失
~HDLターゲット治療~ コレステロール引き抜きと逆転送促進を目指すべき
スタチンによる強力なLDL-C低下療法によっても残存する心血管疾患の発症・再発をいかに防ぐか—。
その解決策として,HDLを標的とした治療が脚光を浴びている。
ペンシルベニア大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)内科・薬理学のDaniel J. Rader教授は「HDL-C上昇」に代わって,HDLによる「コレステロール引き抜き(efflux)と逆転送の促進」を目指す治療へのコンセプトの転換を提言した。
HDL-C仮説からHDL流動仮説へ
Rader教授はまず,疫学研究などを基に提唱された「HDL-C上昇が心血管イベントを減少するだろう」との"HDL-C仮説"が,遺伝子学的研究や今学会での徐放性ナイアシンのAIM-HIGHなどの臨床試験により痛手を負っていると指摘した。
同教授らは,HDLによるコレステロールの引き抜きと逆転送に焦点を当て研究を推進してきた。
測定が難しかったマクロファージからのコレステロール逆転送をin vivoで定量化できるモデルマウスや,HDLにより逆転送されたコレステロールを肝臓に取り込む受容体scavenger receptor class B type I(SR-BI)のノックアウトマウスなどを作製。
後者ではHDL-Cは上昇するが,逆転送の障害により動脈硬化が促進されることを明らかにした。
一方,プロブコールのHDL-C低下作用にも着目。
同薬が肝臓のATP結合カセット輸送体(ABC)A1活性を阻害し,肝臓から血漿中へのHDL由来コ レステロールの排出を抑制してHDL-Cを低下させるものの,胆汁中や糞便へのコレステロール排出を増加させて逆転送を促すことを解明し,これが動脈硬化軽減に寄与している可能性を示唆した。
さらに同教授らは,ヒトでのHDLによるマクロファージからのコレステロール引き抜き能のin vitroでの測定系を開発。臨床的にもHDL-C引き抜き能が,HDL-Cとは独立して頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)や冠動脈造影による冠動脈疾患 と有意な逆相関を示し,HDL-Cよりも冠動脈疾患との関連が強いことを突き止めた。
同教授は「HDL-C仮説を捨て去り,コレステロールの引き抜きと逆転送の促進が心血管イベントを減少するという"HDL流動(flux)仮説"を提案 するときが来た」と強調。
コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬が,ABCG1経路を介してマクロファージからのコレステロール引き抜きを促 進している可能性や,CETPが逆転送のプロセスの鍵を握っている可能性にも言及した。
出典 Medical Tribune 2012.1.5
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~evacetrapibの第Ⅱ相試験~ 優れた脂質改善効果が明らかに
HDLコレステロール(HDL-C)値の上昇を目指す治療が模索される中,期待を集めているのがコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬だ。
クリーブランド・クリニック臨床研究調整センター(オハイオ州クリーブランド)のStephen J. Nicholls部長らは,新規CETP阻害薬evacetrapibが,懸念される血圧上昇などを来すことなく,HDL-C値を著明に上昇させ,LDL コレステロール(LDL-C)値を低下させることを,第Ⅱ相試験としてオーランドで開かれた第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011)で明らかにした。
結果の詳細はJAMA(2011; 306: 2099)に報告された。
500mg/日群でHDL-C 128.8%上昇,LDL-C 35.9%低下
対象は,18歳以上で食事療法と脂質改善薬のウオッシュアウト後に,低HDL-C(男性45mg/dL,女性50mg/dL未満),または高LDL- C(100mg/dL以上,上限はリスク別に130~190mg/dL),トリグリセライド(TG)400mg/dL未満の脂質異常症患者。
欧米の70施 設から393例が登録され,
(1)evacetrapib単剤療法(プラセボと同薬30mg,100mg,500 mg/日の4群)
(2)スタチン併用療法(アトルバスタチン20mg,シンバスタチン40mg,ロスバスタチン10mg+プラセボまたは evacetrapib 100mg/日の6群)
-にランダムに割り付け,二重盲検で12週間追跡した。登録時の背景因子は各群同様で,平均年齢58.3歳,女性が56%,平均 LDL-C 144.3mg/dL,同HDL-C 55.1mg/dLだった。
単剤療法でのベースラインからの脂質変化は,HDL-Cがプラセボ群0.7mg/dL低下に対し,evacetrapib群では用量依存性に30.0mg/dL,50.9mg/dL,66.0mg/dL上昇した。
1次評価項目はベースラインからのHDL-CとLDL-Cの変化率で,HDL-C変化率はプラセボ群の−3.0%に対し,evacetrapib群では 用量依存性に53.6%,94.6%,128.8%と増大した(各P<0.001)。
一方,LDL-C変化率はプラセボ群の3.9%増大に対 し,evacetrapib群では用量依存性に有意な減少を示し,500mg/日群では−35.9%に及んだ(各P<0.001)。
臨床現場で頻用されるスタチン3種との併用療法では,evacetrapib併用群のHDL-C変化率は79.9~94.0%,LDL-C変化率も −46.1~−52.3%で,evacetrapib併用によりHDL-C上昇(P<0.001)とLDL-C低下(P<0.01)の増強が認められた。
安全性評価では,evacetrapib単独/併用群で有意な血圧上昇,鉱質コルチコイド作用などの有害作用や重篤な有害事象の増加はなく,忍容性も良好だった。
有用性高い対象の解明が課題
指定討論者でペンシルベニア大学内科・薬理学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のDaniel J. Rader教授は,HDL-C上昇が心血管イベントを減少するとの"HDL-C仮説"をCETP阻害薬が検証する可能性に期待を表明。今回の evacetrapibの用量によるCETP阻害率は50~90%だが,CETP阻害と心血管リスク減少との間に直線的関係が存在するかは不明であり,「心血管リスク減少のためのCETP至適阻害率の解明と,CETP阻害薬により最も恩恵を受ける対象集団を明らかにすることが今後の課題だ」と展望した。
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代田浩之氏,平山篤志氏に聞く
今年(2011年)の第84回米国心臓協会年次学術集会(AHA 2011:11月12~16日,オーランド)で発表され,N Engl J Med(2011; 365: 2078-2087)に同時掲載されたSATURN試験。
Study of Coronary Atheroma by InTravascular Ultrasound: Effect of Rosuvastatin Versus AtorvastatiN
冠動脈に20%以上の狭窄がある症候性冠動脈疾患患者約1,000例を対象に,現状考えられる最強度の強化スタチン療法2レジメンを施行し,プラーク退縮効果を比較したものだ。結果は,11月17日に紹介した通り,両群ともに前例のない同等の大きな効果を示した。
そこで,順天堂大学循環器内科学教授の代田浩之氏,日本大学循環器内科学教授の平山篤志氏への取材を基に,SATURN試験をより詳細に読み解き,日本の臨床における意義を探った。
TAVはプラークの絶対量を,PAVは血管径をも反映する指標
SATURN試験では,血管内超音波(IVUS)を用いた標的冠動脈に対する評価が行われ,1次評価項目としてプラーク容積率(PAV)の変化 率,2次評価項目として全プラーク容積(TAV)が設定された。
治療104週後,PAVはロスバスタチン群,アトルバスタチン群ともにベースラインに比べ 有意に減少したが,群間差は認められなかった。
一方,TAVも両群ともに著明に減少したが,その程度はロスバスタチン群の方が有意に大きく,TAVの減少 が認められた患者の割合もロスバスタチン群の方が有意に高率だった。
類似しているように見える2つの指標だが,その臨床的意味は異なる。
平山氏によると,近年の臨床試験の結果から,心筋梗塞などの冠動脈イベントのリスクとして,
(1)プラークの不安定性,
(2)プラーク容積の絶対量,
(3)血管径の小ささ
―が提唱されている。
このうち(1)は今回のSATURN試 験では評価の対象外である。TAVは(2)そのものだ。
これに対し,PAVは血管全体に占めるプラーク容積の割合であり,(2)のみならず(3)をも評価 する指標だという。
PAVとTAVは基本的に相関するが,そうでない場合も存在すると同氏は指摘する。
具体的には,血管径に変化がなくプラーク容積が減少した場合は,PAVもTAVも減少し,血管内腔は拡大している。
しかし,血管径が縮小しプラーク容積が減少した場合ではTAVは減少しても,PAVは減少せず,血 管内腔は拡大していない。
SATURN試験を実施したクリーブランドクリニック(米国)のグループがTAVではなく,PAVを1次評価項目に設定したのは,このようなこと からPAVの方が臨床的意義の高い指標だと判断したためだと考えられる。
同試験の試験統括者で,同クリニック循環器科部長のSteven E. Nissen氏はMT Proの取材に答え,PAVが臨床イベントと最も強い相関があることを強調している。
必ずしもPAVの方が有用といえない
ただし,代田氏はTAVに比べPAVが必ずしも臨床的に有用な指標とはいえないと指摘する。
同氏によると,一般にスタチンは,動脈硬化による病的変化である血管のポジティブリモデリングを改善(=血管径を縮小)しながらプラークを縮小させるという。
血管内腔の保持という点だけに注目すると不利な結果をもたらすのだが,スタチンはポジティブリモデリングの改善によって血管やプラークの性状を改善させる。
その意味で,PAVはプラーク容積とポジティブリモデリングの両方を評価していることになり ,TAVに比べ変動しにくく,PAVを改善することにより大きな意味があるとも言える。
しかし,血管のリモデリングはLDL-Cの低下以外の要因によって規定されている。
治療によっては,(血管径を縮小させないで)プラークの性状が改善される可能性も示されており,「PAVとTAVの臨床的意義の差を明確に結論付けられない」とするのが代田氏の見方だ。
なお,両氏とも,ロスバスタチン群でTAVの改善効果が大きかった理由として,同群のほうがLDLコレステロール(LDL-C)の低下が有意に大きく,HDLコレステロール(HDL-C)の上昇が有意に大きかったことを挙げる。
その意味では,脂質をより強力に改善することがより強力なプラーク容積の減少に有効であることが示唆される。
LDL-Cが高いほどプラークは退縮しやすい
SATURN試験については,PAV変化率に関するサブグループ解析の結果も発表されている。
ひとつには,ベースラインのLDL-Cで層別比較す ると,PAV減少率はLDL-C低値群に比べ高値群で有意に大きく,LDL-C高値群ではロスバスタチン群の方がPAV減少率が有意に大きかった。
LDL-Cが高いほどプラークが退縮しやすいという結果は,誰もが納得できるところだろう。
一方,両氏とも頭をひねるのは,性差に関する層別解析だ。
PAV減少率は男性に比べ女性で有意に大きく,女性ではロスバスタチン群の方が有意に大きい―この結果をどう解釈するのか。
代田氏はスタチンのプラーク退縮効果に性差があることについては,「HDL-Cのレベルでも交互作用の傾向があるので,HDL-Cがより高い群すなわち女性で差が出やすかった可能性があるが,一方SATURN試験参加者における女性の割合は3割弱。この規模の試験のサブ解析では偶然の結果である可 能性も否定できない」と述べる。
平山氏も,このデータだけでは確かなことはいえないという。
日本におけるLDL-C管理目標値の変更には多くの課題
SATURN試験の結果は,日本の臨床においてどのような意味を持つのだろうか。
両氏ともに高く評価するのは,LDL-Cを強力に低下させた(ロスバスタチン群62.6mg/dL,アトルバスタチン群70.2mg/dL)ことで,強力なプラーク退縮を実現したことだ。
SATURN試験が冠動脈疾患高リスク例に対する強化スタチン療法の有用性を裏付ける重要なエビデンスとなることは間違いない。
代田氏は「スタチン単独で約7割の患者においてプラーク退縮効果が得られたことの意義は大きい」と語る。
しかし,両氏� �もに「今後の検討課題」と指摘するのは,日本人冠動脈疾患高リスク例に対するLDL-C管理目標(現行ガイドラインでは100mg/dL)を引き下げるべきかどうか,引き下げるとしたらどのレベルまで下げるかだ。
脂質低下とプラーク退縮の関係は明らかになりつつあるが,日本人における検討は不十分だ。
「LDL-Cを下げるほどプラーク退縮効果は大きくなるのが,その効果はベースラインのLDL-Cが低くなるほど小さくなり,どこかでプラトーになる。その閾値を明らかにする必要がある」と平山氏。
代田氏は 「厳密な比較ではないが、欧米に比べ日本人のプラークの方が退縮しやすいという可能性も指摘されている。そのことから考えると,日本人のLDL-C管理目標は欧米より若干高めでよいのかもしれない」と述べる。
さらに,両氏とも,プラーク退縮と真の評価項目である冠動脈イベントとの関係についてのエビデンスは欧米を含め不十分だと指摘する。
SATURN 試験で達成された両薬剤のPAV・TAV減少効果,あるいはTAVにおける両薬剤の効果の差がどの程度の臨床イベントの違いに結び付くかは,今後の検討課題となる。
もちろん,日本人において現行より強力なスタチン療法を行う上では,安全性に対する綿密な検証も重要だ。
強化スタチン療法の意義を示したSATURN試験だが,プラーク退縮という観点からLDL-C管理目標値を変更するには,解決すべき多くの課題が残されている。
この分野の新研究成果が注目される。 (平田 直樹)
出典 MT pro 2011.12.19
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冠動脈疾患(CAD)や慢性腎臓病(CKD)を有する患者では、レムナントリポ蛋白が心血管イベントの強力な予測因子になる可能性が新たに指摘された。
フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、山梨大学の斉藤幸生氏らが発表した。
CKD症例では、冠動脈イベントのリスクとなるトリグリセライド値が高い。
トリグリセライドに富むリポ蛋白は多彩に存在するが、それらの中でどのリポ蛋白が冠動脈リスクになるのかは未だ明らかではない。
今回、斉藤氏らは、レムナントリポ蛋白がCAD患者やCKD患者における冠動脈イベントの予測因子となる可能性についての検討結果を報告した。
対象は、山梨県において冠動脈インターベンションを施行した患者を前向きに連続して登録している多施設共同研究FUJISUN registry(2008年5月開始)から、連続で抽出したCAD/CKD患者229例。
CKDは、糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満と定義した。
レムナントリポ蛋白の量的評価では、血漿中のレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)を免疫分離法で定量して指標とした。
対象のうち、46例が冠動脈イベントの既往を有し、183例はイベントを経験していなかった。
両群のベースラインの患者背景では、既往あり群のBMIは24.8±3.3kg/m2で、既往なし群の23.4±3.8kg/m2に比べて有意に高く(P<0.05)、糖尿病罹患率(68% 対 41%)も有意に高かった(P<0.05)。
また、既往あり群ではトリグリセライド値(142±49mg/dL 対 124±54mg/dL)、BNP(287±326pg/mL 対 238±296pg/mL)、血清クレアチニン値(2.98±3.00mg/dL 対 1.69±1.92mg/dL)、RLP-C値(6.2±3.8mg/dL 対 4.3±1.8mg/dL)が有意に高かった(P<0.05)。
一方で、既往あり群のHDL-C値(39±10mg/dL 対 43±10mg/dL)、クレアチニンクリアランス(33±20mL/分/1.73m2 対 42±15 mL/分/1.73m2)は有意に低かったP<0.05)。
試験開始後、心臓死、非致死性心筋梗塞、冠動脈血管再建術を要する不安定狭心症、心不全の発症を記録した。対象をRLP-C値5.7mg/dL以上74例 と5.7mg/dL未満152例に分けて解析すると、18カ月の時点でRLP-C高値群では28例(38%)でいずれかのイベントが生じ、RLP-C低値 群の18例(12%)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。
内訳は、心臓死5例 対 0例、心筋梗塞4例 対 2例、不安定狭心症15例 対 14例、心不全4例 対 2例だった。
Kaplan-Meier曲線による4つのイベント非発症率の解析でも、RLP-C高値群は低値 群に比べ、有意に低かった(P<0.01)。
さらに、段階的多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、RLP-C高値が冠動脈イベントの予測因子であることが示唆された(ハザード比1.8、95%信頼区間:1.3-6.9、P<0.01)。
ROC曲線の解析でも、既にリスクとされている加齢、男性、喫煙、糖尿病、LDL-C高値、HDL-C低値、収縮期血圧高値にRLP-C高値が加わると、ROC曲線化面積が0.63から0.76に有意に拡大し、予測値が高まることが示された(P<0.05)。
斉藤氏は以上の結果を踏まえ、「RLP-Cの定量は、CADおよびCKDの患者の冠動脈イベントリスクの層別化にも活用できると考えられる。今後は、実臨 床にRLP-Cの評価をより積極的に取り入れ、エビデンスを蓄積し、パラメータとしての信頼性を確立していきたい」と、さらに一歩踏み込んだ研究を見据え、意欲を示した。
出典 NM online 2011.11.22
版権 日経BP社
<私的コメント>
少し調べてみると「運動療法が脂質代謝、特に中性脂肪改善効果を通して、腎保護作用をもたらす可能性がある」、「ΔeGFRとΔ中性脂肪が有意な負の相関」といったCKDと中性脂肪の関連をみた論文が見つかりました。さらには「CKD患者において中性脂肪が独立した危険因子である」(Am J Med Sci. 2009;338(3):185-9)、
「高中性脂肪・低HDLがCKDにおける腎機能悪化の条件の一つで、この悪循環を断ち切ることも腎保護につながった可能性がある」(J Am Coll Cardiol. 2008;51(25):2375-84)」といった論文もあります。
論文を読んでいないので両者の関係をどのように考察しているのかわかりませんが、CKDといういわば漠然とした病態概念にTGがどのように関与するのか知りたいところです。
一方、家族性高コレステロール血症においては腎障害の
発症は報告されていないようです。
しかし,健常人における健診時の脂質異常症は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
Physician's Health Study では,健常男性においてTC,非HDLコレステロールの上昇,HDL コレステロールの低下は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
またHelsinki Heart Study では,LDL コレステロー
ル/HDL コレステロール比の上昇がCKD 進行の
危険因子であったと報告されています。
脂質異常症のCKD に対する影響は多くのコホート研究により示されており,TC 上昇,TG 上昇,LDL コレステロール上昇,HDL コレステロール低下は,それぞれCKD
進行の危険因子であったとのことです。
ARIC Study では,CKD におけるTC 上昇とTG 上昇がCVD 発症の危険因子であったということです。
Muntner P, He J, Astor BC, Folsom AR, Coresh J. Traditional and nontraditional risk factors predict coronary heart disease in chronic kidney disease: results from the atherosclerosis risk in communities
study. J Am Soc Nephrol 2005;16:529-538.
臨床というリアルワールドではCKDに対してフィブラート系薬を使用することについては細心の注意が必要となります。
ベザフィブラートとフェノフィブラートの投与はCKDス
テージ3で慎重投与,CKD ステージ4,5 においては原則禁忌とっているからです。
<自遊時間>
こういったデモは世界的に流行しています。
開業医と勤務医は同床異夢の部分もあります。
何事もそうですが、どんな組織でも「総意」というものがあっても完全に細部にわたって意見が一致することはありません。
総論賛成、各論反対また逆の場合もあります。
私がこういった組織に深入り出来ないのはこういった理由です。
東京でのデモをされた先生方の多くは病院関連の先生であると想像されます。
この先生方が日本医師会に加入されているのかどうかは知りませんが、日本医師会との関係を断ち切ってのデモなのでしょうか。
彼らは医学部新設を唱えています。
いわば、日本医師会とは立場を異にしています。
この団体に対して、今年は日本医師会の副会長が挨拶のために壇上に上がったとのこと 。
このことにはいささかの違和感を覚えます。
<関連サイト>
全国医師ユニオン
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同等の"前例のない"大きな効果,AHA 2011で発表のSATURN試験
強化スタチン療法による動脈硬化進展抑制の検証において,初のスタチン間比較が実施された。
このロスバスタチンとアトルバスタチンのプラーク退縮効果を検証したSATURN試験の 結果を,第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011:11月12~16日,オーランド)において,米クリーブランドクリニック臨床研究センターディレクターのStephen Nicholls氏が発表した。
その結果,症候性冠動脈疾患患者への24カ月間の最大用量投与により,標的冠動脈のプラーク容積率(PAV)がともに有意に減少した。
両薬間の効果に差は見られなかった。
同氏は「至適なLDLコレステロール(LDL-C)値やHDLコレステロール(HDL-C)値を可能とする最大用量の強化スタチン療法において,高い忍容性と前例のない高頻度かつ大きなプラーク退縮が示された」と述べた。
この成績は,N Engl J Med 2011年11月15日オンライン版に同時掲載された。
20%以上の狭窄有する冠動脈疾患患者に最大用量のスタチンを投与
SATURN試験は,北米,欧州,南米および豪州の208施設が参加した二重盲検ランダム化比較試験(RCT)だ。
対象は血管内超音波法 (IVUS)で冠動脈に1カ所でも20%以上の狭窄が認められた症候性冠動脈疾患患者。
2008年1月〜09年6月にかけて1,578例が登録され,1,385例がランダム化割り付けされた。
まず,試験用量の半量で忍容性とLDL- C 116mg/dL未満の達成を確認する2週間のスクリーニング期間が設けられ,その後に,ロスバスタチン40mg群(R群)とアトルバスタチン 80mg(A群)に割り付けられ,104週間の投薬期間を経て再びIVUSが施行された。
割り付けが行われた1,385例のうち346例(25%)はIVUSの未実施などにより脱落したため,R群520例,A群519例の計1,039例が解析対象となった。
標的冠動脈プラーク退縮率は同等,全プラーク容積はロスバスタチンでより大きく減少
対象患者の平均年齢は57歳で,男性が約4分の3,BMI中央値は30%弱,高血圧7割程度,糖尿病15%程度,スタチン使用歴は6割程度だった。
他の治療薬としては抗血小板療法が98%に行われており,β遮断薬が6割程度,ACE阻害薬は4割強,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は 15%程度に投与されていた。
試験終了時の脂質値は,LDL-C値がR群62.6mg/dL,A群70.2mg/dLとR群で有意に低く(<0.001),HDL-C値はR群 50.4mg/dL,A群48.6mg/dLとR群で有意に高かった(P=0.01)。
そのため,LDL/HDL比はR群1.3,A群1.5とR群で有意に小さかった(P<0.01)。
1次評価項目は,IVUSにより求められる標的冠動脈のPAV変化率で,R群の1.22%縮小に対してA群では0.99%縮小と両群間で差はなかった(P=0.17)。
しかし,両群ともベースラインに比べて有意な退縮が示された(表)。
Nicholls氏は「スタチンが用いられた試験の中でも最も大きい退縮率であった」と述べた。
一方,2次評価項目の全プラーク容積(TAV)のベースラインからの変化は,A群4.42mm3減少に対してR群では6.39mm3の減少と,R群の方が有意に減少していた(P=0.01)。
なお,1次評価項目でPAV縮小が認められた患者は全体の3分の2に上り,その頻度はR群が68.5%とA群63.2%を上回ったが,有意差はなかった(P=0.07)。
最大用量の強化スタチン療法でも3分の1で動脈硬化が進展
観察期間に発生した主要心血管疾患イベント(MACE)は,R群7.5%,A群7.1%とともに低かった。
副作用として,肝機能異常を示すALTの3×正常値上限(ULN)がA群2.0%に対してR群0.7%,蛋白尿がR群3.8%に対してA群1.7%と両群間に有意差が認められたが,全般に低率だった。
HbA1cの変化も両群で0.1%以下にとどまった。
脂質値の変化に違いは認められたものの,PAV変化率は両群同等であったことから,Nicholls氏は「いずれの強化スタチン療法でも前例のないプラーク退縮作用と高い忍容性が認められた。
しかし,3分の1の患者では動脈硬化が進展していたことから,さらなる抗動脈硬化治療の模索が必要といえ る」と結んだ。
指定討論者でノースウエスタン大学フェインバーグ予防医学教授のDarwin R. Labarthe氏は,1次評価項目と2次評価項目の結果に一貫性がない点や,割り付けの4分の1が脱落した点を挙げ,2剤の違いについて今回の成績から 臨床効果の違いを示すことはできないと指摘した。
出典 MT pro 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
<私的コメント>
昨日の診療終了後。
たまたまファイザーのMRさんがSATURN試験の結果の説明に来ました。
iPadで発表内容を、見せてくれたのですが一見アトルバスタチンに比較してロスバスタチンが有利な結果でした。
RCTということでバイアスはないものと思われますが、スポンサーはアストラゼネカのようです。
<自遊時間 その1>
ルイ・ダゲールは写真を発明した人とのことです。
ノーベル賞は物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞の6部門がありますが「物造り」の部門がありません。
じょの中の平和賞は本来ノーベルの遺志で作られたものですが、非常に軽い人(?)も受賞しています。
該当者がない年には無理に受賞者を選ばないでこういった飛行機、自動車、コンピューターなどの「物造り」の人に光りをあてていただけないものでしょうか。
もっともノーベル賞は1901年からですから、ルイ・ダゲールは受賞できなかったでしょうが。
スティーブ・ジョブズ氏なども「人類のために最大たる貢献をした人々」ということでは、立派な該当者かも知れません。
こんなことをふと思った次第です。
<自遊時間 その2>
定期購読の医学雑誌の継続更新の季節となりました。
私は長年「週刊・日本医事新報」を大学生協で定期購読して来ました。
ご存知のように4月から模様替えをして、内容も随分若い先生向きに変わりました。
いわゆる「ハウツー物」が増えました。
これを良しとするかどうかは購読者が決めることです。
私はモデルチェンジしてからのこの雑誌に個人の読み物として毎週777円を投資する価値はない、と判断しました。
来年から購読中止する旨、生協に電話をしました。
すっきりしたような後ろ髪を引かれるような複雑な心境です。
<ちょっと気になるサイト>
ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズからのお願い
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